膨大な量の父の写真。
もちろん長年勤めていた国鉄社員旅行のものが沢山ある。この写真は男性たちが皆手ぬぐいでハチマキをしているが、これはたぶん温泉旅行だったのだろうな。
わたしが生まれる前の父と母の顔がそこにある。母は富士銀行の出向で国鉄本社に行き、そこで父と出会った。付き合いは秘密だったので、お茶くみの母が茶碗を下げにいくと、小さなメモが入っていて今日の待ち合わせ場所を確認していたという。電話さえ自宅にない時代の恋人たち。
写っているのが誰かもわからないもの、風景がどこかもわからないものもたくさんある。何枚か残してあとは全てゴミ箱へ。ごめんね。
たぶん1900年代初めかな。母方祖父の若い頃。当時東京で石屋を始めたばかりのころだと思う。母が物心つくころにはすでに何人か職人をかかえていたらしい。わたしが生まれる前に亡くなっているので、顔は写真でしか知らない祖父。母の顔にどこか面影がある。